[本]「つながり」の進化生物学/岡ノ谷一夫


 

本書は東大教授の筆者が、専門の進化生物学について、高校(川越高校、川越女子高の有志に向けて)で特別講義したものです。

一読して感じたのは、講義いただいた内容を本書を一度読んだだけで、すべて理解するのは自分には無理ということ。さぞかし、この講義に参加していた学生は優秀&好奇心旺盛なんだなとあっぱれな気持ちです。

そもそも進化生物学って、wikipediaによると

”進化生物学にはやや異なる二つの側面がある。一つは生物の種は共通祖先からどのような歴史をたどってきたかを明らかにする面で、分子遺伝学、分岐分類学、古生物学などと密接に連携する。もう一方は自然選択や中立進化など、進化を駆動する要因やメカニズムを明らかにする面である。これは分子遺伝学、集団遺伝学、生態学、ゲーム理論などと密接に関連する。”

とあります。本書はどちらかというと後者にあたるのかなと。

そして筆者の最終到達点として目標としておいているところは、

”コミュニケーションの進化の研究は、私たちがそもそもどんな動物なのかを知り、結局は何が幸せなのかを教えてくれるかもしれない”

というところかと。しかしながら、一方で上記における完璧な回答は得ることができないと認識しつつ、回答に近づくための努力を惜しまずに研究しているということ。

究極は、人間は何のために生きているのかを求めることだと思うんですが、それがわかってしまったら、人間として生きる価値がなくなるので、人間である以上、それは永遠にわからにことなのだと思います。

ただ、いろいろなものに疑問を持ち、なぞ解きをしていく行為に人間を高める価値があるのだと思います。

そういった意味で今回講義を受けた学生は幸せだなと思います。自分の学生時代は義務教育&義務教育の延長みたいな感じで、知識の譲り受け・詰め込みでしかなかったような印象です。やはり一辺倒の丸暗記というより基本的な知識とともにトンガった知識が得られるような動機付けがあると、勉強しているほうもやりがいが出ますよね。

すでに自分は脳細胞の退化ばかりが激しくなる状況ではありますが、いろいろな書物などを通して、考えることができればと思う次第です。

大学進学を考えている学生諸子にオススメであるとともに、先生方にも「考えさせる授業」を実施していただくヒントとしてオススメの一冊でした。

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  • 私はコミュニケーションの進化の研究は、私たちがそもそもどんな動物なのかを知り、結局は何が幸せなのかを教えてくれるかもしれないと考えています。
  • 「送り手から受け手へ信号の伝達がなされ、受け手の反応によって、長期的には送り手が利益を得るような相互作用」(進化生物学におけるコミュニケーションの定義)
    →人間と太陽。太陽は光を送るが利益を得ていない。フクロウとネズミ。ネズミの動きによる音でフクロウは気づき、ネズミをとらえることができる。これもネズミは利益を得ていない。
  • 人間は、言葉があることで、死を怖がる。言葉が我々の未来をつくっているとも言えるんじゃないかな。
  • 「抱っこ」は一部の霊長類にしか見られない行為
    →松沢哲郎さんの『想像するちから』
  • 妬みは、自分がもたないものを相手が持っているときに、嫉妬は、自分のそばにいるべき第三者が他人のそばにいるときに生じる感情だよね。妬みは2人いれば生じますが、嫉妬には3人目が必要です。
  • 感情認知における「次元説」(ジェームズ・ラッセル)
    →感情を二次元の座標軸(快・不快軸&睡眠・覚醒軸)で表す
  • 言葉がある程度、柔軟に動けるというのは、感情が現れる表情の一部に、ぜったい嘘をつけないところがあって、それが保証になっているからではないかと僕は考えています。
  • 他人に意識があるということは、原理的には証明できない。
  • 『海の仙人』(絲山秋子) 読みたい

yanchablue について

通信系会社でシステム開発を中心に従事。趣味はスポーツ(サッカー)、読書(雑読)、日曜プログラミング(仕事ではプログラムを書けない分類になってしまった。)。横浜市金沢区在住。札幌市出身。 ( Twitter @peter_luck )
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